tamago

短歌 二次創作 その他

「選ばれないことは死ぬこと」今日もまた私はひとを一人ころした

好きな人と遊んでいたいだけなのに差別主義者の様に言われる

切り捨てた側の声たちが可視化され首の後ろにのしかかる夜

こんなことみんな平気でやれるのに欠陥品の心を恨む

優しすぎ💦なんて言葉で済まされて 時間だけが過ぎ暗い場所にいる

選ばれたり選ばれなかったりするわけじゃん 縁を大事にしたいだけじゃん

(2017.12)

さよならの気配が詰まったこの部屋で 冷たい空気を胸いっぱい吸う

祖母の目に 綺麗な青があることを 介護ベッドの上に来て知る

たましいがもういないってわかるのに 髪を撫でまだ話しかけてる

腰の辺りに 入れた絵の色が燃え付いて 緑に染まって骨を拾った

さよならを言えずに帰ってきた僕に クリスマスソング高らかに鳴る

(2017.12)

いつかしぬ人が静かに梨を剥き いつかしぬ人が新聞を読んでいる 朝

見ないふりばかりが上手になっていく 靴音だけが響く廊下で

「死んでから三日は耳は聞こえる」なんて 誰も知らない優しさばかり

永遠にひらかぬ瞼をかすめゆく ”涙そうそう”は誰に届くか

もう生きていない もう生きていない人の足 わたしが見たのはたったそれだけ

目に見えるものの全てが遺品みたい 私が透明になっていく夜

心臓の音を辿ってここまで来たの 生きるってたぶんそういうことだ

ピングドラム

旅人に林檎の在処を尋ねれば あにおとうととなりし日を指す

触れてはいけない星に触れたね あの日の罰をまだ覚えてる

ありがとう私を覚えていてくれて 透明な日々に色がついた日

守りたかった守るべきだと 一人では何もできない子供が嫌で

なにもかも終わった後にも星は光 蠍の灰を抱きしめ生きる

狂骨の夢

死んだ後ばけものをつくる仲間にしてよ わたしの骨を一本あげる

たまらなく耳をふさいでも鳴り止まぬ潮騒 生まれる前からずっと

海べりの女の人のまぼろしを 見て見ぬふりして大人になるの

冷え切った手足ばかりが赤くなり 骨はいつまでも白白と光る

生きるのがイヤ 嫌 厭 海の底にもまだ土がある

汚れてる 体が汚れてる気がして 骨になる夢を何回も見る

病棟から運ばれるからだ 精神科 穏やかな顔 死因は老衰

50年近くも入院してたから住所もよくわからない、と云う

精神がこころ たましいだとしたら このひとはいま健やかだろうか

思い出があったかどうかもわからない もう誰も語らない人の生涯

またひとつ細い蝋燭の火が消えた あなたはわたし わたしはあなた

翌朝に消される弱音ツイートの 余命5時間足らずのいのち

半分に割った錠剤が嘲笑う 成人女性に満たないからだ

頑張って いつか折れちゃうくらいなら 頑張らないで笑っていてよ

生きるのが辛いのだろう 張り詰めてもがく貴方の日本語が好きだ

死ぬ事で完成したいと嘯いていた 元恋人が35になる

少しでも美しいまま死ぬために呼吸を早めるような真夜中

柔らかな異国のひかり 放課後のあの日の部室と変わらなかった

「高潔」を表すならば迷わずにあなたの薄いくちびるを描く

いつの日か灼熱の火にくべられる薄い頭蓋のきれいなかたち

(エルミタージュ)

人形の夢から目覚め歩き出す 伸ばした指に揺れる花びら

与えられそして与える 繋ぐこと それが芸術と教えられたの

いつだってハッピーエンドを諦めない これまでもそしてこれからも

いのちからいちばんとおい場所に咲く 花束のような君の横顔

控えめに笑う 涼しいまなじりに朱が灯るからもうすぐ春だ

(夏目)

眠れない夜は甘いお砂糖ととびきり優しい嘘をあげるね

あれは魔法 これも魔法と気まぐれに指さす君は宇宙の指揮者

1.2.3 唱えたのなら顔を上げ こぼれた星を集めにゆこう